パラドックス?

http://d.hatena.ne.jp/yottya/20040904に書いてある東北大入試の物理の問題ですが,面白いですね.解いて久しぶりに感動してしまいました.いや,感動というよりは怖いのかな…

一応,ここにも問題を簡略化したバージョンを書いておきます.

質量mの大きさが無視できるボールがある.このボールを地球上の高さ0の位置からから真上に初速度v0>0で投げ上げる.このボールと地面とのはねかえり係数をe(00で,衝突のたびにe倍になるから,衝突前にスピードがあるなら衝突後もスピードがある.だからスピードが0になる(=停止することは無い).''
だと思います.少なくともぼくは最初そう思いました.

しかし,実際にはそうではありません.どうしてかと言うと,地面から速度vで垂直方向に飛び上がったボールが次に地面に衝突するまでの時間をΔtとすると,~
0=vΔt-(1/2)g(Δt)^2~
という式が成り立つので,Δt=2v/gとなります.ボールが無限回地面と衝突するとボールの速度は0になるので,それまでにかかる時間は初項を2v0/g,公費をeとした無限等比級数~
2v0/g + (2vo/g)e + (2vo/g)e^2 + (2vo/g)e^3 + …~
として表されます.これは有限値に収束し,~
2v0/g(1-e)~
となります.よって,2v0/g(1-e)だけ時間がたつとボールは停止します.

この解き方から分かるように,最初に考えたアイデアの欠陥は「無限回衝突するには無限時間かかる」と考えてしまったことです.確かにボールのスピードが0になるには無限回の衝突が必要なのですが,実際には衝突するたびに衝突の間隔が短くなって行くので,結局は有限時間内に無限回の衝突が起こり,速度が0になってしまいます.

こう言ってしまうと,「なんだ,ただ単に衝突が無限回起こるのと無限大の時間がかかるのをごっちゃにしていただけじゃないか」と思ってしまうかもしれません(実際某氏にそういわれてしまいました)が,この問題をただ単にそれだけで片付けてしまうのはちょっと勿体無い気がします.

この問題って,ゼノンのパラドックスを形を変えて出した問題ですよね.飛矢のパラドックスで言うと飛矢がボールに変わっていて,飛矢がいつまでも的にたどり着けないこととボールがいつまでも運動を続けることが対応しています.

飛矢のパラドックス自体を聞くと議論が間違っていることが感覚的に分かりますが,少し複雑な姿に変えてやるととたんにもっともらしく見えてきます.なんだかある意味恐ろしいなあ.

ちなみに,この問題をよっさゃ氏から聞いたあとためしに他の友達にも出題してみたところ,既に解いたことがあるという人がひとり居ました.多分知っている人は知っている問題なんでしょう.しかし,この問題を入学試験に出す東北大もなかなか面白いなあ…